【EcoTopics】日本のエネルギー政策はどう変わる? 第7次エネルギー基本計画のポイントと第6次計画との比較

2025年2月に第7次エネルギー基本計画(以下「第7次」という。)が閣議決定されました。2021年10月に策定された第6次エネルギー基本計画(以下「第6次」という。)との比較を行うことで、どのような変化があったのかEco Topicsとして取り上げます。
1.総括(主な相違点)
①エネルギー安全保障の強化
ロシア・ウクライナ戦争や中東の地政学的リスクの高まりを受け、エネルギー供給の安定性を最優先に位置づけています。また、天然ガスや重要鉱物資源の確保が、新たな政策の柱として明確化されました。
②2040年を見据えた長期的視点の導入
第6次では2030年をターゲットにしていたのに対し、第7次では2040年を見据えた政策目標が設定されました。
③脱炭素と経済成長の両立
再生可能エネルギーのさらなる拡大に加え、原子力発電の活用と次世代炉の開発推進が明確化されました。また、GX(グリーントランスフォーメーション)投資が強調され、産業界と連携した脱炭素戦略がより具体的に示されています。
2.第7次と第6次の比較
総論として、①計画全体を比較したもの、各論として、②エネルギー需要側に係る箇所と③太陽光発電に係る箇所を詳細に比較したものを整理いたします。②、③については5.参考ページに一覧表をまとめます。
①計画全体の比較
3.まとめ
①計画全体の比較
第7次は、エネルギー安全保障の強化、2040年を見据えた長期的な政策目標の設定、GX投資の推進という3つの軸で構成されており、日本のエネルギー政策において重要な転換点となっています。特に、カーボンプライシングの導入やGX投資の拡充が明示され、脱炭素と経済成長の両立を図る戦略が具体化されました。また、再生可能エネルギーの導入加速と、原子力・脱炭素型火力の活用によるエネルギー供給の安定化も重要なポイントです。第6次と比較すると、より具体的な施策が打ち出され、2040年に向けたロードマップが明確化されています。特に、産業・業務・家庭・運輸部門ごとに、省エネ・脱炭素化の具体的な義務化や支援策が強化された点が特徴的です。
②エネルギー需要側に係る箇所の詳細比較
第7次では、エネルギー消費の効率化と脱炭素化を進めるため、各部門で以下の施策が強化されました。
産業部門
- GX投資支援とカーボンプライシングの導入により、企業の脱炭素投資を促進。
- CCUS技術の導入拡大と脱炭素型製造プロセスの普及。
業務・家庭部門
- ZEB・ZEHの義務化を検討。
- EMSの活用促進とスマートビルディング技術の導入。
- 家庭向けの太陽光発電設置義務化の推進。
運輸部門
- 2035年までに新車販売を100%電動車化し、充電インフラや水素燃料供給網の拡大を推進。
- 鉄道・海運の活用による輸送の効率化と脱炭素化。
第6次と比較すると、省エネ・脱炭素化の施策がより具体的かつ強化されていることが特徴です。
③太陽光発電に係る箇所の詳細比較
第7次では、太陽光発電のさらなる普及拡大に向け、以下の施策が強化されました。
屋根設置型太陽光発電
- 住宅・商業施設の屋根に太陽光パネルを設置し、分散型電源として活用。
- 自治体レベルで新築建築物への設置義務化を検討。
- PPAを活用し、企業・自治体の自家消費型太陽光の導入を支援。
地上設置型太陽光発電
- 環境・景観に配慮した適地開発を推進し、大規模発電所の導入を加速。
- ソーラーシェアリングの普及を支援し、農業とエネルギー供給の両立を目指す。
次世代型太陽電池の社会実装
- ペロブスカイト太陽電池など次世代型技術の商用化を加速し、高効率・低コスト化を推進。
- 耐久性向上やリサイクル技術の開発を進め、持続可能なエネルギー供給体制を構築。
- 規制改革・市場支援を強化し、国内外での競争力を向上。
第6次と比較すると、設置義務化やインフラ整備、次世代技術の実装支援など、より積極的な政策が追加されています。
4.今後の展望
第7次エネルギー基本計画は、国際的なエネルギー安全保障のリスク、脱炭素への社会的要求、そして技術革新という3つの大きな潮流に対応したものです。今後は、これらの施策が実行に移されるとともに、エネルギーシステム全体の高度化、各部門での脱炭素化推進、そして国際的な連携強化が、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた重要な要素となるでしょう。
5.参考
②エネルギー需要側に係る箇所の詳細比較
③太陽光発電に係る箇所の詳細比較
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(令和7年2月 公共コンサルティング部 藤﨑)
出典:
[1]経済産業省 第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました
https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001.html
[2]経済産業省 第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました
https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005.html
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