【EcoTopics】公営住宅における脱炭素化

目次

建築物省エネ法が改正され、2025年4月から建物の種類や規模を問わず、省エネ基準の適合義務が拡大されます。公営住宅については、2022年に公営住宅等整備基準に係る技術的助言が改正され、新築におけるZEH水準への適合や、原則として太陽光発電設備を設置することが示されました。

新築や増改築に対する制度が整備される一方、2030年の温室効果ガス46%削減の目標達成に向けては、圧倒的に多い既存の建築物への対策が必要となります。地方公共団体としてできることとして、公営住宅の共用部分の省エネ対策にスポットを当ててご紹介します。

 

■公営住宅の共用部分における省エネ対策

地方公共団体実行計画(事務事業編)(以下、「事務事業編」という)では、公営住宅の共用部などの地方公共団体が管理する部分については、事務事業編の算定の対象範囲として含めることになっています。

 

以下の省エネ対策を実施することで、事務事業編における二酸化炭素排出量を削減することができます。

 

●照明のLED化

集合住宅のエントランスやエレベーターホールは24時間照明を点灯させていることが多い場所です。点灯時間が長いほど、LED交換による省エネ効果は高く出ます。24時間点灯させている誘導灯や非常照明も優先してLED化を進めるとよいと考えられます。

2023年11月の「水銀に関する水俣条約 第5回締約国会議」において、一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入を2027年までに段階的に廃止することが決定されました。メーカーによっては、既に国内での製造を終了しているところもありますので、今後蛍光灯が入手困難になることも考えられます。今から計画的にLED化を進めることが必要です。

 

●エレベーターの省エネ化

エレベーターの駆動方式が電動ポンプで油圧を制御する油圧式の場合、ロープ式のエレベーターに更新することで省エネ化が図れます。また、ロープ式の場合も、かごとおもりのバランスを最適化して稼働時のエネルギーロスをなくした機能や、照明や制御機械の待機電力を抑えた機能があると、さらに省エネ効果を高めることができます。

 

●給水設備の省エネ化

受水槽から高置水槽に水を送る高置水槽方式の給水設備の場合、受水槽に直結された水道に直接圧をかけて給水する増圧直結方式にすることで、揚水ポンプの動力が必要なくなる分、省エネ化が図れます。

 

●浄化槽の省エネ化

集合住宅に設置される中・大型の浄化槽は様々な機械設備が備えられており、高効率ブロワ、ブロワの稼働を制御するためのインバーターや、タイマー等が設置された設備機器への更新により、省エネ化が図れます。

 

以下の省エネ対策は、実施範囲が建物全体に及ぶため、大規模修繕等を実施する際に実施可能な省エネ対策となります。集会室などの共用部分の空調によるエネルギー削減の他、主に公営住宅の居住者の使用するエネルギーを削減することができ、区域の家庭部門の二酸化炭素排出量の削減につながります。

 

●屋上や壁面への高反射塗料・遮熱性塗料の塗布

屋上や壁面の際に高反射塗料・遮熱性塗料を塗布すると、太陽光に含まれる近赤外領域の光を高いレベルで反射するため、屋上や壁面の温度上昇を抑えることができ、建物内での空調エネルギーの使用削減等に繋がり、省エネ効果が得られます。

 

●壁面の断熱化

大規模な改修となりますが、壁面に十分な断熱材を入れることにより、建物内での空調エネルギーの使用削減等に繋がり、省エネ効果が得られます。

 

●玄関ドアの断熱化

玄関ドアを断熱性能の高いものに更新することで、冬の屋外の冷たい空気や夏の日射熱が建物内に伝わりにくくなり、建物内での空調エネルギーの使用削減等に繋がり、省エネ効果が得られます。

 

●窓の断熱化

窓ガラスを単層から複層へ変更したり、サッシをアルミから樹脂製に変更することにより、窓面からの夏季における熱の流入や冬季における熱の流出を防ぐことができ、建物内での空調エネルギーの使用削減等に繋がり、省エネ効果が得られます。

 

 

■公営住宅の省エネ対策に使える支援制度

環境省や国土交通省において、下記のような財政支援等の支援ツール・枠組みを設けており、それらを効果的に活用することが考えられます。

※それぞれの支援内容について、要件がありますのでご確認ください。

 

●集合住宅の脱炭素化の取組に対する関係府省庁の主な支援ツール・枠組み

https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/supports/

・社会資本整備総合交付金等(公営住宅等整備事業、公営住宅等ストック総合改善事業等)

・脱炭素社会型公的賃貸住宅改修モデル事業

・浄化槽システムの脱炭素化推進事業     など

 

株式会社ナレッジリーンでは、本トピックスに関するものだけでなく、環境政策全般のご相談に応じますのでお気軽にお問合せ下さい。

 

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(令和6年7月 公共コンサルティング部 天野)



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