【EcoTopics】超軽量で曲がるフレキシブルなソーラーパネルについて
脱炭素推進の手法の一つに建築物等への太陽光発電導入が挙げられますが、建築物等へ設置するには屋根の耐荷重不足やそもそも面積が少ないといった立地上の制約があります。これらを克服するものとして、建築物の壁面等に設置可能な次世代太陽電池としてペロブスカイト太陽電池の開発が進められており、社会実装が2030年を目途に目指されています。その一方で、従来のシリコン素材でありながら超軽量で曲がるフレキシブルソーラーパネルが近年リリースされ始めています。本トピックでは、フレキシブルソーラーについてご紹介します。
フレキシブルソーラーパネルの特徴
①超軽量
従来の太陽光パネルと比較して1/4の重量で、㎡あたりでは3~4kg程度です。厚みは2.5~3mm程度の極薄設計でパネルの枠にガラスやフレームが使われていません。設置にあたりパネルを支える基礎や架台は不要なため考慮すべき荷重はパネルのみです。そのため、屋根の耐荷重不足で設置できなかった屋根へのアプローチが可能になります。また、屋根のみに限らず、曲面など特殊な屋根形状や壁面等、あらゆる場所に設置が可能です。
②高効率
従来の高性能パネルと同等で約20%と高い変換効率となっています。薄膜シリコン系太陽電池は発電効率が低い点が最大の問題でしたが、革新的な技術で高効率が可能となっています。
③簡単施工
接着工法を基本としており、メーカー指定の両面テープ、接着剤により固定が可能です。軽量のため持ち運びやすく、基礎や架台が不要で容易に設置できるため、工期が大幅に短縮できます。
④耐用年数・保証
耐用年数は従来の太陽光パネルと同等と考えられ、メーカーによる25年の出力保証が付帯しています。発電量がメーカー保証値を下回ってしまった場合に適用されます。また、12~15年の製品保証が付帯しており、パネルが故障した場合において適用されます。さらに、パネルが剥がれた場合の補修、屋根から雨漏りが発生した場合の賠償・補修、自然災害時にパネルが飛散した際の施工保証や、自然災害時にパネルが近隣に飛散した場合の賠償についても20年の保証体制を組み合わせることが可能です。
さまざまな設置手法
①アスファルト防水の陸屋根
フレキシブルソーラーパネルをアスファルト防水の陸屋根へ直接貼る場合、アンカーボルトによる固定が不要なため、設置時においては防水層への直接的な影響はありません。しかし発電時の熱等でパネルが伸縮する影響により長期的には防水層の損傷が懸念されることから、パネルと防水層の間に緩衝材(絶縁シート)を敷設し、パネル敷設面を防水層と絶縁することにより防水層の損傷を防ぎ、より安全な維持管理が可能となります。
②折版屋根、曲面屋根等
屋根の耐荷重不足により、既存の太陽光パネルが設置できなかった折版屋根等へのアプローチが可能です。折版屋根等においても接着工法が基本です。曲がる性質を活かし曲面の屋根にも設置が可能です。
③大規模改修時期に合わせたアプローチ
公共施設の体育館等の金属屋根改修には、一般的な改修手段として塗装塗り替え、屋根の葺き替えといった方法がありますが、既存屋根の上にシート防水材を用いることで、高い防水性能を付与しつつ、さらにその上にフレキシブルソーラーパネルを設置する手法が、コスト面や工期等の課題も解決できる効果的な方法の一つです。
ペロブスカイト太陽電池について(参考)
①素材や軽量性
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を使用しています。重さは従来のシリコン型の1/10程度であり、フレキシブルソーラーパネルよりもさらに軽量です。軽量性と柔軟性により、建築物の屋根や窓や壁であったり、IoTデバイス等の小型機器等、さまざまな場所やものに設置が可能です。さらに、製造コストの低減が期待されています。
②変換効率
研究初期は10%を下回っていましたが、最新技術では20%以上の変換効率が報告されています。
③日陰でも発電可能
広域帯の光を吸収できる特性、高い光を吸収できる特性、低光条件下でも高い感度を持っていること等の特性により、ペロブスカイト太陽電池は日陰や光の弱い状況でも効率的に発電することが可能です。
④耐久性
ペロブスカイト太陽電池は耐久性に課題があり、赤外線や紫外線、湿気に弱いという特性から一般的には5~10年程度とされています。最新の動向においては、積水化学が2025年までに20年相当の耐久性を実現する方針を固めています。
⑤今後の動向
2023年10月には、岸田首相はペロブスカイト太陽電池を挙げ、2025年の実用化を表明されています。2024年3月には、経済産業省はペロブスカイト太陽電池を2025年に固定価格買取制度(FIT)に加え、通常の太陽光発電よりも優遇すると発表しています。
環境省の補助事業
屋根や屋上だけでなく、窓や外壁なども含めた一体型の太陽光発電の有効活用を促進していくため、2024年度より活用可能な補助金として、「窓、壁等と一体となった太陽光発電の導入加速化支援事業」が創設されています。「窓と一体となった太陽光発電設備」は補助率3/5、「壁等と一体となった太陽光発電設備」は補助率1/2であり、事業期間は2025年度までとなっています。
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(令和6年5月 公共コンサルティング部 小西)
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