【EcoTopics】バイオマスエネルギーの概要と事例
近年、脱炭素社会の構築に向け、再生可能エネルギーが注目されてきており、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が進んできています。今回のコラムでは、再生可能エネルギーの1つであるバイオマスエネルギーを取り上げます。
バイオマスとは
バイオマスは生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、「再生可能な、動植物に由来する有機性資源(石油などの化石資源を除いたもの)」を示します。代表的な例では木材や稲わら、ふん尿などがあります。バイオマスは化石資源とは異なり、生物が太陽エネルギーを使って水と二酸化炭素から生成する有機物であるため、持続的に再生可能な資源です。
バイオマスには様々な種類があり、発生する産業や性質などから以下のように区分することができます。
【出典】再生可能エネルギーとは バイオマスの分類(経済産業省 資源エネルギー庁)(令和5年10月24日閲覧)
バイオマスを原料として得られるエネルギーを、バイオマスエネルギーと言います。バイオマスエネルギーは、バイオマスを直接燃焼したりガス化したりするなどして電気や熱に変換する方法や、バイオマスから液体燃料や固体燃料を製造し、燃料とすることで得ることができます。
【参考】◇バイオマスの活用をめぐる状況(農林水産省)(令和5年10月)
次にバイオマスエネルギーの取組み事例をご紹介します。
バイオマスエネルギーの取組み事例
新たな技術開発も進んでいるバイオマスエネルギーですが、今回は取組みやすい事例として、すでに技術が実用段階にあるバイオマスエネルギーをご紹介します。
都市部での取組み事例:食品廃棄物を原料としたバイオガス発電
近年、食べられるのに廃棄される食品、いわゆる【食品ロス】が問題となっています。
大量の食品ロスが発生することにより、様々な影響や問題が顕在化しています。例えば食品ロスを含めた多くのごみを廃棄処分するため、処理コストがかかります。また食品ロスを含む食品廃棄物を可燃ごみとして燃やすことで、CO2排出や焼却灰の埋め立て等による環境負荷が考えられます。
この食品ロスをリサイクルする1つの方法として、(食品ロスを含む)食品廃棄物からメタン発酵によりバイオガスを製造(メタン化)し、バイオマスエネルギーとする取組みが進められています。
人口が多く食品廃棄物の発生が一定量見込まれる都市部では、食品廃棄物のメタン化によるバイマスエネルギーの活用が検討できると考えられます。
バイオガス発電事業例:鈴与菊川バイオガスプラント
鈴与菊川バイオガスプラント(静岡県菊川市)では、グループ会社や地域から排出される食品加工残渣等の有機性廃棄物を原料としたバイオガス発電事業を2016年より実施しています。
この廃棄物には菊川市の給食センター等、市の公共施設から発生する食品残さも含まれており、地域の廃棄物処理問題に寄与すると共に、未利用バイオマスを活用する取組みといえます。このプラントでは年間約100万kWh(一般家庭200世帯分の電力量に相当)が発電されています。
なお同プラントを運用する鈴与商事株式会社と菊川市は、市のゼロカーボンシティ実現に向けた官民連携の取組みを推進するため、2023年8月に包括連携協定を締結しました。
【参考】広報菊川 令和4年10月号 p.5(静岡県菊川市)(令和4年10月20日)
【参考】「ゼロカーボンシティ」実現に向けた包括連携協定の締結(静岡県菊川市)(令和5年10月24日閲覧)
農山村部での取組み事例:木質バイオマスを原料とした熱利用
森林資源が豊かな地域では、木材(木質バイオマス)を直接燃焼したり、ガス化したりするなどして電気や熱に変換する、木質バイオマスエネルギーの活用が検討できると考えられます。
FIT制度の導入により全国的に木質バイオマスを原料とした発電事業の導入が進められています。このような木質バイオマス発電事業では(特に事業規模が大きい場合には)長期に渡る木質バイオマスの安定確保が必要となるなど、多くの検討事項があります。そこで本コラムでは、比較的容易に取組みが可能と考えられる、木質バイオマスエネルギーの熱利用をご紹介します。
木質バイオマスエネルギーを熱利用する場合、次のようなメリットがあります。
- 高い利用効率(発電での利用効率:30%以下、熱利用での効率:70%以上)
- 用途ごとに様々な温度帯での熱需要がある
- 発電事業と比較し、木質バイオマスの調達範囲を狭めることができる
近年ではガス化発電など小規模な木質バイオマス発電の技術開発が進み、発電施設から生まれる熱を電力と併せて活用する熱利用事例も増えてきています。このように電力と熱が同時に生産される「熱電併給」では、発電施設から発生する熱をいかに有効活用できるか、事業検討することが経済性の確保につながります。
木質バイオマス熱利用の事例
全国で多くの導入実績が積まれてきています。以下に事例が整理されているサイトをご紹介します。
- 木質バイオマス熱利用・熱電併給事例集(林野庁)(令和4年5月更新)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/con_4.html - 木質バイオマス熱利用プラットフォーム 事例
(一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会)(令和5年10月24日閲覧)
https://info.wbioplfm.net/practice/
バイオマスを有効に活用するために
バイオマスエネルギーの原料として、食品廃棄物と木質バイオマスを取り上げました。これらバイオマスはエネルギーとして有効活用することで、脱炭素化や資源の地産地消などにも貢献することができます。しかしいずれも無尽蔵にあるわけではない資源であることを念頭に置く必要があります。
食品廃棄物の発生抑制と再生利用の促進を目的とする食品リサイクル法では「食品廃棄物の発生を抑制する」ことが最優先とされています。日本の食料自給率が38%(カロリーベース)であることを鑑みても、エネルギー利用の前に貴重な食品を無駄なく消費することが前提であるといえます。
また木質バイオマスエネルギーの活用では、木材のカスケード利用という考え方が重要です。カスケード(Cascade)とは「連なった小さな滝」を意味する用語で、木材はこの滝のように多段階的に利用することが基本とされています。具体的にはまず木材を建材等の資材として利用し、その後紙などの利用を経て、最終的に燃料として利用するといった流れになります。森林の多面的機能を維持しながら、森林から発生する木質バイオマスを有効に活用していくことが求められています。
(令和5年11月 公共コンサルティング部 松田)
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