【EcoTopics】住民との協働による自治体の外来生物への対応について
令和5年6月1日からアメリカザリガニとアカミミガメについて、条件付特定外来生物としての規制が始まりました。9月1日からはツヤハダゴマダラカミキリとサビイロクワカミキリのカミキリムシ2種が追加され、令和5年9月末現在、159種の特定外来生物が指定されています。生物多様性の保全のためには、特定外来生物を含む外来生物への対策が重要となっています。
今回は、外来生物への自治体の対応について、住民との協働による取組事例を交えて紹介します。
外来生物に対する自治体の役割
外来生物に対して、生態系に影響を与え、農作物への影響や人への健康影響の観点から外来生物に対して被害防止、防除対策が国や県と連携して各自治体によって行われていましたが、外来生物法の改正(令和4年3月閣議決定、令和5年4月施行)により、「被害発生状況等の実情に応じた、我が国に定着した特定外来生物の被害防止に努める」ことが自治体の責務として明記されました。
具体的には、特定外来生物等による被害の実態把握(情報収集)、住民・事業者への被害防止のための周知・啓発、特定外来生物の防除対策の実施を推進することが必要なります。そのため、令和5年度から自治体が取り組む特定外来生物の防除や、総合的な外来種対策を進めるための戦略、外来種リスト等の策定に向けた調査・検討について、交付金制度が創設される等、自治体による外来生物対策への国の支援が拡充されています。
自治体による特定外来生物等の防除対策
特定外来生物等の防除対策は、自治体によってさまざまな方法で行われています。代表的なものを、以下にまとめてみました。
実施方法 | 特 徴 |
市町村が独自または都道府県との共同で防除 |
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イベントの一環として防除 |
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住民との協働による防除 |
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今回、住民との協働によって特定外来生物であるクビアカツヤカミキリの防除に取り組んでいる群馬県館林市の取組について、以下に担当職員の方へのインタビューとともにご紹介します。
取組事例紹介:群馬県館林市 クビアカツヤカミキリ撲滅プロジェクト
クビアカツヤカミキリは、幼虫がサクラなどに食入・加害することで樹木を衰弱させる害虫(特定外来生物)です。館林市では、サクラなどの樹木を守るため、「クビアカツヤカミキリ撲滅プロジェクト」を実施しています。プロジェクトは、市民によるクビアカツヤカミキリの成虫駆除に対する「駆除奨励金および奨励品交付制度」、被害木への薬剤と防虫ネットを交付する「防除用品の配布制度」、被害樹木へ樹幹注入処理を支援する「被害樹木への樹幹注入剤による処理制度」の3つの制度で構成されています。このうち、「駆除奨励金および奨励品交付制度」について担当職員の方にお話を聞きました。
【クビアカツヤカミキリ撲滅プロジェクト(駆除奨励金および奨励品交付制度)の概要】
出典:館林市ホームページ クビアカツヤカミキリ撲滅プロジェクト(参照2023-10-01)
■担当職員の方へのインタビュー
―どのような経緯でプロジェクトが始まったのですか?
館林市:館林市では、群馬県内で初めて特定外来生物であるクビアカツヤカミキリが市内で発見されたことを受け、令和元年度に「クビアカツヤカミキリ撲滅プロジェクト」を始動しました。
―どうして報奨金、報奨品制度にしたのですか?
館林市:市内のいたるところでサクラの木への被害が発生していたため、防除には多くの人の手が必要であると考え、市民の方に駆除に協力していただくために報奨金、報奨品制度という形にしました。前年度実績を踏まえ、毎年予算を確保しています。
―どれくらいの数のクビアカツヤカミキリが提出されていますか?
館林市:令和4年度は延べ88名の参加があり、7,174匹のクビアカツヤカミキリが提出されました。令和元年度から毎年6,000~7,000匹提出されています。
―プロジェクトの手ごたえや市民の方の反応はいかがですか?
館林市:市ホームページ、チラシ、広報によってプロジェクトを周知しており、多くの方にクビアカツヤカミキリに興味を持っていただけるようになったと感じています。特に夏休み期間はお子さんの参加も多く、クビアカツヤカミキリを捕まえるとおこづかいがもらえる、と喜んでいるようです。若年層への取組が定着しているという点は大きな成果だといえます。報奨金や報奨品に関係なく、ボランティアで参加してくださる方もいらっしゃいます。
―プロジェクトの今後の展望を教えてください。
館林市:プロジェクトの開始から5年が経過し、クビアカツヤカミキリの認知度や制度が浸透しました。しかし、毎年クビアカツヤカミキリの駆除をしてはいますが、被害木の数が減少しているかというとまだそこまでの成果は得られていません。長期にわたり防除対策が必要になります。今後も引き続き、市民の協力を得ながら、プロジェクトを推進していきたいと考えています。
特定外来生物をはじめとする外来生物の防除対策は、その種類や特性、生息・生育域、繁殖程度に応じて最適な方法を選ぶ必要があります。また、すぐに成果や効果が得られるとは限らず、長期にわたり対策が必要となることも想定されるため、継続できる方法や手段の検討も重要となります。住民との協働による取組は、特に不特定・広範囲にわたって生息・生育している外来生物の防除対策の方法として有効です。住民への外来生物への正しい知識の周知と啓発も同時に進めることで、住民の外来生物対策の意識醸成が図れれば、継続した取組の展開も期待できます。
(令和5年10月 公共コンサルティング部 天野)
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