【EcoTopics】食品ロスの削減対策の強化に向けて
令和5年6月に農林水産省から、「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和3年度)」が公表されました。それによると、令和3年度の食品ロス(=まだ食べることができるのに廃棄されている食品)の発生量は約523万トン(うち家庭系約244万トン、事業系約279万トン)と推計されています。
国連の「持続可能な開発計画(SDGs:Sustainable Development Goals)」のターゲットのひとつとして食品ロスの削減目標が掲げられたことを受けて、近年、日本国内では食品リサイクル法に基づく新たな基本方針の公表(令和元年7月)、食品ロスの削減の推進に関する法律の施行(令和元年10月)等といった法整備を伴う動きが活発化しており、食品廃棄物の発生抑制および再生利用に係る地方自治体の役割は大きくなっています。
本コラムでは、国内の食品ロスの発生量の推移と食品ロス削減のための情報をご紹介いたします。
世界における食品ロス問題
平成27年9月の国際連合で議論・採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、世界人口に占める栄養不足人口の割合(栄養不足蔓延率)について、1990年~1992年の18.6%から2010年~2012年の11.8%に低下し、改善の兆しが見えてきているものの、未だに飢餓で苦しんでいる人々がいることが課題として明示されました。また、2022年7月の国連が発表した「世界の食料安全保障と栄養の現状」とするレポートによると、世界全体で飢餓の影響を受けている人の数(慢性的な栄養不足人口)は、2021年には最大で8億2,800万人と推定されました。これは世界の全人口の約1割を占めていることになり、とりわけ、大量の食料を輸入し、食料の多くを輸入に依存している日本としては、食品ロスの削減について、真摯に取り組むべき課題です。
食品ロスの発生量の推移
国内では、食品ロスの発生量について、2012(平成24)年度から詳細な推計を実施しています。
2012年度から比べると2030年度半減目標(2000年度比)に向かって順調に減少しているものの、2021(令和3)年度の食品ロスの推計値を国民一人当たりに換算すると、未だに"お茶碗約1杯分(約114g)の食べもの"が毎日捨てられていることになります。
我が国の食品ロスの発生量の推移
※端数処理により合計と内訳が一致しないことがあります。
出典)環境省HP, 我が国の食品ロス発生量の推移値(令和3年度)の公表について
添付資料「別添 我が国の食品ロスの発生量の推移等」(参照2023-7-4)
日本が掲げる食品ロスの削減目標
「第4次循環型社会形成推進基本計画」(平成30年6月19日閣議決定)及び食品リサイクル法に基づく「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」(令和元年7月12日公表)において、家庭系及び事業系の食品ロスを2030年度までに2000年度比で半減するとの目標が定められています。家庭系及び事業系の削減目標値と推移は、それぞれ以下のとおりです。
家庭系食品ロス量の削減目標と推移
【目標】2000年度(433万トン)比で、2030年度までに半減させる(216万トン)
出典)環境省HP, 我が国の食品ロス発生量の推移値(令和3年度)の公表について
添付資料「別添 我が国の食品ロスの発生量の推移等」(参照2023-7-4)
家庭系食品ロス量は、2012年度以降、全体では減少傾向にあります。詳細をみると、近年は「過剰除去」「食べ残し」については減少している一方で、「直接廃棄」は横ばいとなっており、発生抑制についての啓発が求められます。
事業系食品ロス量の削減目標と推移
【目標】2000年度(547万トン)比で、2030年度までに半減させる(273万トン)
出典)環境省HP, 我が国の食品ロス発生量の推移値(令和3年度)の公表について
添付資料「別添 我が国の食品ロスの発生量の推移等」(参照2023-7-4)
事業系食品ロス量は、2012年度以降、全体では減少傾向にあります。詳細を見ると、近年は「食品卸売業」、「外食産業」については減少している一方で、「食品製造業」、「食品小売業」は横ばいとなっており、納品期限の緩和、賞味期限の表示の大括り化・延長、季節商品の予約制等需要の応じた販売方法の導入、値引きやポイント付与等の運用による売り切りの工夫など、具体的な取組への協力を求めていく必要があります。
自治体職員向けの取組マニュアルの紹介
2030年の目標達成に向けて、自治体としても各方面で取組の強化が求められている一方で、より効果的な対策の着手・検討には課題があります。そこで、国が公表しているマニュアルやモデル事業を有効活用することで、今後の食品ロス削減対策の強化につなげていきましょう。
食品ロス削減のための取組マニュアル
食品ロスの削減に向けた対策が喫緊の課題であることは明確ですが、限られた予算の中で、自分の自治体ではどのような対策がより有効的なのか見極めなければなりません。このマニュアルでは、先進的な取組み事例の実施の流れ・ポイントが整理されており、各自治体にあった事例の探し方から参考にすることができます。成功事例からヒントを得て、自治体に合った削減対策に取組んでいきましょう。
環境省 食品ロスポータルサイト 自治体向け情報 削減の事例・取組方法を知る(参照2023-7-04)
自治体職員向け食品ロス削減のための取組マニュアル(令和4年10月更新版)
食育・環境教育の取組マニュアル
学校給食調理施設も、食品廃棄物・食品ロスが発生している施設のひとつで、食品関連事業者の取組に準じて食品循環資源の再利用等を促進すべき施設と位置付けられています。本モデル事業を実施した複数の自治体で、食育・環境教育の授業等によって、児童の意識や行動に変化が生じ、給食の食べ残し量が削減されることが確認されていますので、このマニュアルを参考に取組みを検討されてみてはいかがでしょうか。
環境省 食品ロスポータルサイト 自治体向け情報 削減の事例・取組方法を知る(参照2023-7-04)
自治体職員のための学校給食の食べ残しを減らす事業の始め方マニュアル(令和5年6月更新版)
フードドライブ実施の手引き
住民の方から取組みへの要望が大きい「フードドライブ」ですが、関わる主体が多く調整が難しい印象を受けます。この手引きでは、自治体が自らフードドライブを実施する、もしくは地域の団体等がフードドライブを実施することを想定し、円滑な実施手順や実施上の課題に対する解決策などが整理されており、導入時の参考となります。
環境省 食品ロスポータルサイト 自治体向け情報 削減の事例・取組方法を知る(参照2023-7-04)
フードドライブ実施の手引き(令和4年3月公表)
そのほか、環境省の展開する「食品ロスポータルサイト」では、モデル事業の紹介や食品ロス削減対策を進める際に利用可能なツールの紹介など、自治体向けの情報発信を行っていますので、ぜひ参考にしてみください。
(令和5年7月 公共コンサルティング部 中谷)
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