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【EcoTopics】国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)と温室効果ガスネットゼロのための採択技術

目次

11月20日に閉幕した国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の概略とCOP27で採択された2050年温室効果ガスネットゼロの実現のための最新技術をご紹介します。

1.国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)開催

国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)/京都議定書第17回締約国会合(CMP17)、パリ協定第4回締約国会合(CMA4)が2022年11月6日~11月20日にかけて、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されました。

COP27の概略

1.    途上国向け「損失と損害」基金の創設に合意

2.  1.5℃目標に向けた削減行動に進展なし

3. 石炭火力の早期閉鎖と再エネ拡大を目指す国際的な協力の拡大

1.    COP27では、気候変動で発展途上国に生じた被害に対する支援基金、「損失と損害(ロス&ダメージ)」基金が設立されることが合意されました。これは、気候変動に特に脆弱な国に対して、人為的な気候変動による人命や財産、生態系への悪影響や深刻な損害に対する支援を目的としたものです。具体的な支援対象国や資金拠出方法といった運用の詳細については来年のCOP28で決めることとなります。

2.    各国の温室効果ガス(GHG)の削減対策(各国の温室効果ガスの削減目標)については進展が見られず、産業革命前からの温度上昇を1.5℃に抑える世界目標(COP26)に対し、各国が表明している削減目標でも温室効果ガスの抑制は不十分と指摘されています。

3.    COP27ではCOP26と同様に「排出削減措置が講じられていない石炭火力発電を段階的に縮小する」という表現の踏襲にとどまっています。世界的には石炭火力発電から再エネ設備へ移行が推進されていますが、日本においては水素だけを燃料とした火力発電やアンモニアを用いた火力発電、CCS(火力発電で発生するCO2を分離・回収して貯留することでCO2の排出量を削減する方法)、などを活用したゼロ・エミッション(温室効果ガス排出ゼロ)火力発電を目指しています。

【参考】外務省 NDC 

また、COP27では西村環境大臣が声明文を出しています。声明文では、2050年温室効果ガスネットゼロと産業競争力強化・経済成長の同時実現を達成するために、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進していく予定です。大胆なGX投資を引き出すために「成長志向型カーボンプライシング構想」を早期に具体化し、国内において今後10年間で150兆円超のGX投資を予定しています。

【参考】環境省 COP27閣僚級セッション 西村環境大臣ステートメント

2.2050年温室効果ガスネットゼロの実現のための最新技術

温室効果ガス(GHG)削減のためには、技術革新は必須と言えます。COP27では、環境省がジャパン・パビリオンで、日本の気候変動対策の長期目標である2050年温室効果ガスネットゼロの実現と世界の脱炭素化を支える脱炭素技術や取組を紹介しました。

【参考】環境省 COP27ジャパン・パビリオン

2050年温室効果ガスネットゼロの実現のためには、産業革命に匹敵するほどのエネルギー革命が必要であり、COP27では下記の3つのテーマについて日本企業が保有・開発中の最新の環境技術を発信しました。

(1)温室効果ガス排出量を直接削減する「緩和策」

(2)排出が避けられないCO₂を原料としてリサイクルする「活用策」

(3)悪影響を最小限に抑える「適応策」

ジャパン・パビリオンで展示された環境技術を以下に示します。

COP27 実地のジャパン・パビリオンにおける採択技術一覧(環境省)より筆者作成

 

COP27 ヴァーチャル・ジャパン・パビリオンにおける採択技術一覧(環境省)より筆者作成

【出典】環境省 国連気候変動枠組条約第27回締約国会議 (COP27) ジャパン・パビリオン設置に伴う展示の採択結果

一部の内容を紹介すると、

  • Carbon-Recycled Concrete/大成建設株式会社:大気や排気ガスのCO₂をカルシウムに吸収させて製造した炭酸カルシウム、ならびに産業副産物である高炉スラグを大量使用することで、カーボンネガティブを実現する技術
  • Power to Chemicals(P2C)/株式会社東芝・東芝エネルギーシステムズ株式会社:排出されたCO2をからCO2電解装置でCOを生成。化成品の原料として価値があるものを産み出す技術
  • 水素ガスタービン,CCUSバリューチェーン/三菱重工業株式会社:水素の製造から貯蔵、供給、利用まで一貫した水素エコシステムの構築
  • ガス化による廃プラスチックからの水素製造/日揮ホールディングス株式会社:廃プラスチックのガス化ケミカルリサイクルによる、廃プラスチックの安定的な処理、原料の生産
  • Re100ソリューション/パナソニック ホールディングス株式会社:5 kW純水素型燃料電池99台(495 kW)と太陽電池(約570 kW)を組み合わせた自家発電設備、余剰電力を蓄えるリチウムイオン蓄電池(約1.1 MWh)を備えた大規模な実証施設

といった技術が展示されています。

詳細は下記の出典技術・企業/団体一覧をご覧ください。

環境省 COP27ジャパンパビリオン 展示技術・企業/団体

3.まとめ

 COP27では途上国向け「損失と損害(ロス&ダメージ)」基金が創設されましたが、1.5℃目標に向けた削減行動には進展がみられていない状況です。世界的に2050年温室効果ガスネットゼロを実現するためには、徹底的な省エネの継続、再エネ設備の導入が必要不可欠です。更なる技術革新を期待しつつ、足元の脱炭素計画・実行を確実に進めて行きたいものです。

(令和4年12月 公共コンサルティング部 小林)



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