コーチング で「その気」にさせる│ピグマリオン効果とは
相手をその気にさせることは難しい?
仕事でも、勉強でも、相手のやる気に火をつけ、その気にさせることは、相手にとってもあなたにとっても、信頼を高めるための大切なプロセスです。
しかし『相手の心に火を付ける』ことは難しいと感じませんか?
たしかに、お互い人であるゆえ、それぞれの思いや考え方があり、下手に火をつけると「嫌われてしまうのでは?」と思うかもしれませんね。
どうしたら、上手く相手を勇気づけ、その気にさせることができるのか?
今回のコラムは、比較的簡単な方法で「相手をやる気にさせる」 コーチングテクニック のおはなしです。
映画『ロッキー2』から学ぶ コーチングテクニック
コーチングを学んだ方の中には、コーチングテクニックを難しく考えている方も少なくありません。
しかし、今回ご紹介する『ピグマリオン効果』を使った勇気づけは、比較的簡単に効果を出すことができ、お互いの信頼関係を深めることができるテクニックです。
今回は、私が先日見た映画『ロッキー2』の中に『ピグマリオン効果』がふんだんに使われたシーンがありましたので、これをベースにおはなしします。
映画『ロッキー2』のネタバレも含みますので、ご注意ください。
今回も最後までお付き合いくださいませ。
『ロッキー2』のストーリー
ロッキー2は、ロッキー1で戦った宿敵アポロ・フリードとの再戦の物語です。
ロッキーにとっては、タイトルの再奪還をねらう試合です。
ところが、試合が近づくにつれて様々な迷いを感じはじめます。
最愛の妻、エイドリアンからの引退の勧め。
トレーナーである、ミッキーからの切り捨てられるような言葉。
「偉大な挑戦者」から、「弱腰」に変わってしまった、という周囲からの視線。
エイドリアンが元気な男の子を出産するも、産後の症状が芳しくなく、昏睡状態に陥ってしまう。
次から次へとロッキーは再試合への闘志が消えかかるような試練に遭遇します。
しかしロッキーは、愛を信じ、周囲の声に耳を傾けながら再戦に挑むのです。
映画の中で使われている「 コーチングテクニック 」
この映画では、多くの コーチングテクニック が使われています。
特にこのシリーズで使われているのは『ピグマリオン効果』という心理テクニックを使った、動機付けが特徴ではないでしょうか。
『ピグマリオン効果』とは、勇気づけや、行動の変容を促すときに使われるテクニックです。特定の人に大きな期待をもって接すると、その人は期待通りに行動を変えてくれる、というものです。
例えるなら、部下に安全な作業をしてほしいとあなたが思ったとき、部下に安全な行動を示してくれるという期待を込めながら言葉や態度で接すると、相手がそれに応えてくれるのです。
ただしあなたは、次に示した4つのことを意識して接しなければなりません。
ロッキー2を題材にどんなテクニックが用いられていたのか、触れて行ってみましょう。
ピグマリオン効果① 雰囲気効果
妻であるエイドリアンの産後の症状が芳しくなく、最愛の人が昏睡状態になったとき、ロッキーは、試合に向けた闘志を全て投げ捨てようとします。
その時、普段は厳しく、キツい言葉をかけ続けたトレーナーのミッキーが、ロッキーに「おまえはそんな男じゃ無いんだ。」と言葉をかけます。
そして、2人は教会で祈り続けました。すると、その祈りが届いたのか、エイドリアンが目を覚ますのです。
すると、散々試合への参戦に反対をしていた妻から「試合に勝って!」と言われます。
これを機にロッキーは、意気消沈していた自分を奮い立たせるのでした。
それまで、ミッキーに弱い者扱いをされ、妻からは試合への参戦を反対され続けるなか、ロッキーは『期待されていない』という思い込みから『期待されている』という雰囲気を感じ取ることで、見違えるような闘志に炎を付けたのです。
これは『雰囲気効果』と呼ばれる心理学的効果で、『ピグマリオン効果』のひとつです。
ピグマリオン効果② フィードバック効果
トレーナーのミッキーからは「おまえは優秀だ!」
最愛の妻エイドリアンからは「あなたは素晴らしいわ!」
信頼する神父からも「ロッキーに神のご加護を!」
ロッキーは、周囲からその能力の良いフィードバックを受けながら、闘志を高めていきます。
これは『フィードバック効果』といわれ、 『ピグマリオン効果』のひとつです。
ピグマリオン効果③ インプット効果
周囲から期待の言葉をかけられたり、良好なフィードバックを受け取るロッキーですが、感情的・情熱的な言葉でそれらを受け取ります。
周囲は、言葉や文字だけでなく、情熱のこもった言葉で、ロッキーの心を奮い立たせたのです。
このように、相手からの情報を受診する行動を『インプット効果』といい、 『ピグマリオン効果』のひとつです。
ピグマリオン効果④ アウトプット効果
闘志に火が灯ったロッキーは、周囲の人に対して様々なアドバイスを求めるため、自らの思いや考えを伝えます。
これは、ロッキーが感情や考えを自らアウトプットしたことになりますが、これを周囲に受け入れられることで、さらにモチベーションが高まっています。
これは、周囲がロッキーの話に耳を傾ける姿勢があるからこそ、成り立つ対話です。
ロッキーは、自らの思いや考えを言葉や行動にすることで、さらに周囲からの良好なフィードバックを受けられることになったのです。
このように、自ら情報を発信する行動を『アウトプット効果』といい、 『ピグマリオン効果』のひとつです。
ピグマリオン効果は根拠の無い勇気づけ?
心理学とは、様々な実験をもとに人の思考や行動を観察し、その変化や行動の特徴を観察しながら科学的に根拠をもった結果としてまとめ上げられるものです。
なんだか、ガチガチの科学って雰囲気ですよね。
ところが、ときおり「ゆるゆる」な実験結果を採用することもあります。
例えば、ピグマリオン効果の実験では、相手に良好なフィードバックを与えるとありましたが、このフィードバックを与えるときに根拠の無いフィードバックを与えても、ピグマリオン効果が見込めるというのです。
「あなたは勉強ができる子ですよ!」
「君なら次のプレゼンで高いパフォーマンスを出せるよ!」
「次の見積もりを出してもらうときは、さらに納得感のある金額を提示してもらえますよね!」
など、相手に期待をかけるとき『根拠の無い期待』をフィードバックしても、その効果は見込めるというのです。
根拠の無い勇気づけとはいえ、その効果の高さからコーチングではよく使われています。
フィードバック効果には気分が影響
行動分析学や行動科学では、理想的な行動を行った場合、その際本人が感じ取る『気分』が影響し、行動を継続するか止めてしまうかを決める、ということが解っています。
例えば、ニンジンを食べたとき
『にがい・渋い』という感覚から『美味しくない』という感情を得ると、ニンジンを食べるという行動をやめてしまったり、
『甘くていい香り』と感じ取り『美味しい』と感情を得ると、ニンジンを食べると言う行動を繰り返すようになることがわかっています。
これは、ニンジンを食べることにより、良い感情を得たか悪い感情を得たか、の違いによって起きる行動の違いです。
また『ニンジンはにがくて渋い』と周囲から言われ続け、周囲の意見に左右されやすいタイプだと、ニンジンを食べる行動さえ回避しようとします。
この『すり込まれた思い込み』は、なかなか取り除くことができません。
あなたが相手に与えるフィードバックは、善し悪しにしろ大きな影響を持っているのです。
『ピグマリオン効果』は、相手にどのようなシーンやどんな方法でといった具体的な「やりかた」を示しています。
コーチングを映画を見ながら復習する!
「個人で勉強をしたり、社内研修でコーチングを学んだのになぜか使いこなせない・・・」と悩まれている方が多いと聞きます。
そんなとき、映画やドラマを見ながら「人を勇気づけるシーン」を気にかけて観るようにしてみてはいかがでしょう。
そして、その勇気づけのシーンと、学び得たコーチングテクニックと紐付けができたとき、より一層の深い理解と実践へのきっかけを作ってくれるはずです。
私のコーチングテクニックを磨ける映画として大好きなのは次のストーリーです。
ロッキー1
ロッキー2
スタートレック エンタープライズ(TVドラマ)
下町ロケット(TVドラマ)
トップガン
フォレストガンプ その他
あなたも、映画を観ながらコーチングテクニックを磨いてみてはいかがでしょうか。
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国内外において、企業内外教育、自己啓発、人材活性化、コストダウン改善のサポートを数多く手がける。「その気にさせるきっかけ」を研究しながら改善ファシリテーションの概念を構築し提唱している。 特に課題解決に必要なコミュニケーション、モチベーション、プレゼンテーション、リーダーシップ、解決行動活性化支援に強く、働く人の喜びを組織の成果につなげるよう活動中。 新5S思考術を用いたコンサルティングやセミナーを行い、企業支援数が190件以上及び年間延べ3,400人を越える人を対象に講演やセミナーの実績を誇る。