環境分野に取り組むCDPとは?回答するメリット・デメリット・費用を紹介

CDPは、企業の環境に関する取り組みを評価する指標として、世界中の投資家やリーダーたちに注目されている最もメジャーな環境情報開示プログラムのひとつです。
ここではCDPについて、目的から質問書の構成まで包括的に解説します。
CDPとは?
CDPは、企業や自治体の環境情報開示のための世界的なシステムを有する英国の非政府組織(NGO)です。2000年に「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」として発足し、日本では2005年より活動しています。CDP質問書を用いて企業や自治体の環境の取組みをスコアリングし、データベースを公開しています。
CDP質問書について
回答対象となる企業
日本においてCDP質問書の送付は、2022年に東証プライム市場に上場する企業全社に拡大され、2024年からはプライム市場以外の一部企業も回答対象となりました。
回答にかかる費用
CDPへ回答するには、回答事務費用がかかります。2024年よりFoundation level fee(通常回答費用)とEnhanced level fee(特典付回答費用)の2種類が用意されており、Enhanced level feeを支払うと、CDPサポーターマークや比較レポートなどの様々な特典を受けることができます。なお、費用は毎年見直されます。
(参考:2024年 Foundation level fee ¥310,000、Enhanced level fee ¥740,000)
回答スケジュール
CDPの回答スケジュールは毎年変動します。2025年は、5月に質問書が公開され、6月にスコアリング基準公開、9月中旬までに回答することが求められています。(2025年1月末時点での最新情報)
CDPのスコア
CDPは回答内容によりA/A-/B/B-/C/C-/D/D-/F(Fは無回答)の9段階のスコアで評価されます。
CDPの質問項目
CDP質問書は2024年に1つに統合され、環境テーマについては、「気候変動(Climate change)」「水セキュリティ(Water secutrity)」「森林(Forests)」「プラスチック(Plastics)」「生物多様性(Biodiversity)」の5つの分野が回答対象です。(注:CDP2024はプラスチック、生物多様性は採点対象外) CDP2024質問書の構成
出典:『CDP2024 情報開示ウェビナー第1回』より弊社作成(https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/009/211/original/CDP2024%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%96%8B%E7%A4%BA%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%93%E3%83%8A%E3%83%BC%E7%AC%AC1%E5%9B%9E.pdf)
気候変動(Climate change)
地球温暖化を抑制するための取り組みについて問われます。現状のGHG(温室効果ガス)排出量およびSBT(科学的根拠に基づく目標)基準を適用した排出削減目標の策定状況などについて報告します。
また、カーボンニュートラルに向けた取り組み(再生可能エネルギーの導入、カーボンプライシングによる排出量抑制など)についても評価対象となります。
水セキュリティ(Water secutrity)
持続可能な水資源の確保についての取り組みについて問われます。環境負荷を低減するための水効率の改善、水の再生利用、洪水対応計画の策定や、企業活動における水資源リスクへの対応策としてのサプライヤーの多様化やBCP(事業継続計画)への反映などを報告します。
森林(Forests)
森林の減少・劣化につながる企業活動を減らし、持続可能な森林資源の活用についての取り組みについて問われます。木材・パーム油・畜牛品・大豆などの項目について、それぞれ企業活動の中での調達による森林破壊リスクの検証や森林保護戦略について報告します。
プラスチック(Plastics)
プラスチックが環境に及ぼす影響を測定可能な状態とし、削減に向けた取り組みについて問われます。サプライチェーン全体でのプラスチック製品の総重量、原料、包装材、そこから発生する廃棄物の総重量について報告します。
※CDP2024では採点対象外
生物多様性(Biodiversity)
事業活動が生物多様性に及ぼす影響について問われます。生物多様性にとって重要な地域での事業活動の有無や、生物多様性保護戦略について報告します。
※CDP2024では採点対象外
CDP質問書に回答するメリット
近年CDPスコアは、機関投資家や企業の調達担当者など、様々なステークホルダーの意思決定や投資判断材料として活用されており、企業価値を示す重要な格付となっています。
CDPに回答することで、以下のようなメリットが期待されます。
- ESG投資の機会拡大や、企業イメージの向上が期待されます。
- サプライチェーン全体での環境貢献が求められていることから、サプライヤーの選定にあたって優位性を確保することにつながります。
- CDP質問書はIFRS、EFRAG等の国際的なサステナビリティ開示基準に整合しており、今後のサステナビリティ情報開示の法制化に向けても対応することが出来ると考えられています。
CDP質問書に回答するデメリット
CDPに回答することには以下のようなデメリットがあります。
- CDPの回答には、回答事務費用が発生します。
- CDPの専門的な設問に対して、適切な回答を作成するためのリソースの調整や手間が発生します。
まとめ
CDP質問書の対象企業やテーマは年々拡大しており、CDP回答を要請された企業は、大企業に限らず、必須の取り組みとなっています。
CDPの評価は企業の環境経営をグローバル基準で測定されるため、市場の評価や企業価値の向上に直結する重要な指標です。
特に近年は、気候変動や水セキュリティ、森林に加え、プラスチックや生物多様性といった新たな課題も対象となり、サステナビリティ情報開示の幅が広がっています。
CDPへの回答は、自社の環境への取り組みを外部に開示するだけでなく、社内の目標設定やガバナンス強化を通じて組織の成長や競争力の向上にも寄与します。そのため、規制強化やステークホルダーの期待に応える長期的なリスク管理や戦略の一環として、企業経営における役割は年々重要性を増しています。
ナレッジリーンでは、CDP回答に関するコンサルティングを実施しています。CDPの回答作成、CDP回答にあたって必要となるリスク・機会の影響度評価、TCFDシナリオ分析などに関してお悩みの方はお気軽にご相談ください。


